ICTの重要性を理解しよう
友人に進められて、Youtubeに上がっているSoftbankの孫社長の、2018年のSoftbank Worldの基調講演を見ました。本当に面白い内容で、かつICTというものについてわかりやすく、説得力を持って語られています。
Softbankの孫社長が2016年に半導体設計会社のARMを3.3兆円で買収した際、メディアはSoftbankが半導体の会社に今更大規模投資を行ったことに懐疑的でした。日本人は多くの大企業や政府投資までが半導体の分野でぼろ負けしていたので、半導体関連の負け戦には辟易していたのです。
しかし、ARMは半導体設計会社です。半導体自体は鉄筋やコンクリートと同じMaterialです。ARMは工場を持っているわけでも原材料のシリコンの在庫を保有しているわけではありません。世界中で激しい価格競争にさらされているわけではありません。しかしながら、世界中で稼働しているスマートフォンの、実に100%は、ARMの半導体で動いています。
スマートフォンは現在でも世界中で30億台程度毎年販売されていますが、今後ビッグデータ、IOTの時代になれば、より多くのARMのチップが必要になるだろうと考えられ、孫社長は来るべき時代に投資したという事でしょう。
孫社長の講演はとても魅力的で面白いので、全部を見ると結構長いですが、時間があるときに是非見てみてください。
ICTが何かを変えるわけではない
今のARMの話であれば、ARMがスマートフォンを変えたわけではありません。通信技術を変えたわけではありません。しかし、ARMは変化の中心にあるのです。
ICTとはまさにそういうものだと思います。ICTは蒸気機関や電気エネルギーのような、実際に何かを作り出す動力ではありません。ICTで生産性が上がるわけではないのです。しかし生産性が上がるところに、必ずICTは存在するでしょう。
そういう意味で、ICTは好きとか嫌いとか、導入を検討するとかしないとか、そういう類のものではありません。
受け入れるか、さもなくば死ぬか。そういうものだと考えた方がいいと思います。
何故ICTは建設業に普及しないのか?
この質問に対する答えも、そういう意味では同様だと思います。建設業の中心にICTがないからです。建設業の生産性が上がらない理由も同じです。中心にICTというコアな部品がないからです。丁度ARMが搭載されていない古いガラケーの様に。
となれば、逆に建設業は伸びしろの長い業界と言えるのではないでしょうか?ただし前述の通り、ICT自体で生産性が上がるわけではありません。ICTを導入したからと言って、重機の排気量が上がるわけではないのです。しかし、重機の稼働率を上げることは可能かもしれません。
変革をするかどうかは人間次第です。変われるかどうかも。ただそこには、そっとICTが佇んでいるでしょう。
ICTとは何かを知ろう
ICT、ICTと気軽に言っていますが、そもそもICTって何?という方もいらっしゃるでしょう。ITとどう違うの?という方も。
ITとICTは何が違うのか?
正解は「何も違わない」。
ITがICTに進化した!…わけでもない
ITはInformation Technology(情報技術)のアナグラムで、ICTは、それにCommunicationを加えたものである、と言われます。そういう意味で、ICTがITの次の段階と言うのは正しいと思います。海外ではITという言葉はもうあまり使われないようです。
個人的には、英文を打つ時にITはItと混同しやすいので廃れたんじゃないかと思います。私見ですけど。
しかし、ICTという言葉が初めて登場するのは1980年代です。普及し始めたのは1997年のイギリス政府の報告書で使用されてからだと言われていますから、日本でITが普及し始めたころには、世界ではすでにICTという言葉が使われ始めていたわけで、我々がITと思っていた技術は、すでにICTだったということになります。つまり何が言いたいかと言うと、少なくとも我々日本人にとっては、ITとICTに大した意味の違いはないという事です。
それでもICTという言葉を使った方がいい理由
日本ではトロンという携帯端末用の独自OSが進化してきた歴史があり、いわゆるガラケー(フィーチャーフォン)が高性能であったため、i-modeや写メールなどの独特のコミュニケーション方法が発達し、海外で普及したWhatsAppなどのチャットアプリは、2011年にLINEが登場するまで、日の目を見ることはありませんでした。
LINEは震災が生んだキラーコンテンツですが、あの日本に甚大な影響を及ぼした大震災の後、日本ではようやくICTという言葉が使われ始めたように思います。
おおげさに聞こえるかもしれませんが、日本人の情報リテラシーを大きく変えたのはLINEであったと思います。
なぜICTという言葉を使った方がいいかを私はこう表現したいと思います。
LINE以前とLINE以降の世界を区別するため。
もちろんFacebookやtwitterなどの普及も同時期に起こりますが、全世代に影響を与えたという意味で、LINEほどのインパクトはなかったと思います。
前述のチャットアプリ、WhatsAppやWechat、Facebookのメッセンジャーなどが日本で普及しなかったのは、それらのサービスが日本向けではなかったからではありません。完全に後発のLINEが、それらのサービスを差し置いて日本で急速に普及した理由は分かっていませんが、私は契機の問題だと思います。LINEは、日本人が変わる瞬間にたまたま居合わせたサービスだったのです。卵と鶏の話の様に、LINE以前はLINEを受け入れる素養がなかったということです。
ITという言葉を使うのはやめよう
いずれにしてもITという言葉を使うのはやめましょう。現在、官公庁でも急速にICTという言葉が普及しているからです。
また、あわせて以下の言葉も覚えておきましょう。
IOT
Internet Of Thingsのアナグラム。すべてのモノのインターネットのこと。モノ自体に位置情報を持たせたり、センサー類を直接インターネットに繋げたりすること。建設業で言えば、ICT建機は、IOTの技術がなければ成り立たない(重機自身に自分の居場所や状態が分からない)。似た言葉でも、意味は全然違うので混同に注意。
RPA
Robotic Process Automation (工程の自動ロボット化)。ルールエンジンや構造解析技術、画像認識技術などを組み合わせたソフトウェアを使って事務作業を自動化すること。デジタルレイバー(仮想知的労働者)とも呼ばれる。
AI
Artificial Inteligence(人工知能)の略。AI自体は古くからある概念であるが、RPAとの違いは、RPAが人間の仕事の代替であるのに対して、AIは人間では処理できないデータ量を処理し、かつ、人間と同等(かあるいはそれ以上の)結論を導き出すことができる。AIの発想自体は昔からあったが、それほど研究が進んでいなかったのは需要がなかったから。しかし現在は、IOTがもたらすビッグデータの影響もあり、人間の情報量が人間の処理能力を超えてきたため、AIの力が必要になってきたのだ。
ICTを恐れることはない
ICTを恐れることはありません。スマホがない生活は考えられない、と言う人は皆ICTの素養があります。
人づてに聞いたレストランの名前をサイトで検索して、紙に印刷してぐるぐる道に迷った経験は過去ないですか?
そんなことすら、私たちにはもう起こりません。
紙に印刷することはまずありませんし、Google mapの言うとおりに進めば大抵目的地にたどり着けますし、なかんずく道が複雑で迷っても、LINEで友達に場所を聞けます。
こういうことは20年前には考えられなかったし、今はこれがない生活は考えられないことです。
デジタルファーストの社会ではすべてのプロセスが、こうした不可逆的な変化に置き換えられていきます。
私たちは、常に、最先端の技術に触れ続ける訓練をすべきです。
ビジネス向けICTツールを理解しよう
SNSなどのICTツールは、今やビジネスシーンでも大いに活用されています。今後は行政でもBYOD(Bring Your Own Device;個人保有の携帯用機器を職場に持ち込み、それを業務に使用すること)が推奨されると考えられ、ICTツールの活用がより重要となる事は必至です。
ここでは、それぞれのICTツールの利点、活用できる状況をご紹介したいと思います。
当時MITの学生だった、ドリュー・ヒューストンがアラシュ・フェルドーシと設立したサービスで、2011年に日本語に対応しました。GoogleドライブやMicrosoftのOnedriveなどの類似サービスが猛追していますが、それでも圧倒的に使われているオンラインストレージサービスです。
専用のフォルダにファイルをドラッグ&ドロップするだけで、データの共有・動機が可能で、特徴的なのは、おそろしくスムーズなファイル同期です。PCでもモバイルでも、シームレスに作業環境を持ち運びできるので、仕事の効率が跳ね上がります。
ストレージには「招待する」機能があり、データ量が重いファイルなども、メールに添付して送ることなく共有できます。
クラウドコンピューティング時代の黎明期に誕生した最強のオンラインストレージサービスです。
Slack
Slackは、Searchable Log of All Conversation and Knowledgeのアクロニムで、「すべての会話と意見をあとから見やすく整理する」という意味があります。
日本人になじみ深いLINEに似たサービスですが、メッセージのやりとりは、ワークスペースと呼ばれる閉鎖型の空間で行われるので、外部に会話が漏れる心配がありません。
通話やビデオ会話にはやや不向きですが、ビジネスチャットアプリとしてはかなり使い勝手の良いサービスです。
チャンネルと呼ばれるチャットルームを自由に開設できるので、複数のプロジェクトの管理に向いています。
英語で短い挨拶(最近どう?みたいな)を意味するWhat's up?を文字った名前で、世界で最もユーザー数の多いチャットアプリ。LINEはWhatsAppよりも後進のサービスなので、LINEはこれのパクリです。
チャット機能自体は日本人には若干使いづらいですが、特筆すべきは通話の品質の高さです。LINEの通話機能は音質が最低ですが、WhatsAppの通話品質は通常の電話と遜色ありません。
また、電話帳にいる人であれば、通話中にグループ通話に追加することが可能で、打合せ中に一度電話を切り、誰かに確認してまた電話する、というような手間がなくなります。チャットアプリというより、通話アプリとして非常に優秀です。
Google Keep
まるで画面に付箋を貼るように、メモすることができる便利なアプリです。メモの内容は、Googleアカウントで同期されるので、どこでメモをとっても、端末からでもPCからでも見ることができます。
また、TODOリストを作ることもできるので、一日の予定を立てるのにも便利です。
また、このメモはほかのユーザーと共有することもできるので、誰かと共同で作業をする必要がある場合に、ある仕事が終わっているかどうかを電話などで確認する必要がないので、非常に便利です。
Google ドキュメント/スプレットシート/スライド
オンライン上でWordやExcel、Power point とまったく遜色ないアプリを利用できるサービス。はっきりいって、Officeがいらなくなるレベル。
Googleドライブに自動で保存されるので、どこにいても内容を確認、編集できます。
そして当然のように誰とでも共有できるので、いちいち更新した後メールするような手間がなくなります。
パワポでデータを作ったはいいが、容量が重くて送る方法がない、というようなことはもうありません。
Google カレンダー
言わずと知れた最強のカレンダーアプリ。
Googleグループを使用すれば、複数のカレンダーを登録・同期できるので、少人数ならビジネス用途としてもまったく問題なく使用できます。
以上のビジネス向けICTは強力なビジネスツールです。
是非活用して業務の効率を上げましょう!
デジタルファーストが建設業に何をもたらすかを知ろう
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42492300V10C19A3EAF000/
いわゆるデジタルファースト法案が審議入りしました。国は、「(1)手続きをIT(情報技術)で完結させる「デジタルファースト」(2)同じ内容の情報提供は求めない「ワンスオンリー」(3)民間サービスを含む手続きを一度に済ます「ワンストップ」――の3原則を打ち出し」ました(2019年3月15日 日経新聞デジタル版より)。
成立すれば、行政機関は今後この論理で改革されて行くことになり、市民の利便性は大いに高まることでしょう。
へぇ、なんか知らないけど便利そうだなー、じゃありません。我々建設業に従事する人間も、この一連の法改正で何が変わっていくのかを、しっかりと知っておく必要があります。なぜなら、この関連法案が建設業にもたらすインパクトが巨大すぎるからです。
まったく他人事ではないデジタルファースト
この流れが実現すれば、建設業界はまったく別物になります。
以下のリンクは、デジタルファースト法案のうち、行政、インフラに関する事項を特にまとめたものです。
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2018/0615/shiryo_04-2.pdf
正直、書いてあることは全て重要ですが、特に重要な項目に絞って解説します。解説していない項目も、読んでおく事をお勧めします。
官データのオープン化
「データを保有する地方公共団体と民間事業者等との調整・仲介の企画」
[i-Construction ]
「橋梁・トンネル・ダム工事や維持管理、建築分野を含む全てのプロセスに対象を拡 建設プロセスにおけるICTの更なる活用を推進」
「建設プロセス全体を3次元データでつなぐため、クラウド化に向けたシステムを構築」
さらっと書いてますが恐ろしい内容です。
例えば、建築確認申請がオンラインで行われ、設計図書やデューデリジェンス、安全衛生管理提出書類、作業計画書、作業指示書、工程表、出来型管理、各種検査のマイルストーン、検査の結果、写真データ、竣工検査提出書類、持続的な施設維持関連書類、消防検査書類、性能検査書類、各種出荷証明、仕様書、性能証明 etc... がオープンソース化されるよこれは、という意味です。
どれだけの自治体と建設業者がこの内容を理解できているでしょうか?国とその他の認識の差が凄まじいです。
例えば次のスクショを見てください。
「建築関係手続の一層の簡素化に向けて、オンライン化されていない手続について 取組の実施」
うん、逆にオンライン化されてる手続きって何かあったっけ?というレベルです。
国はかなり本気です。
これらの施策は確実に実施されると考えてください。
公共工事が変わる。集住という避けられない変化
「コンパクト・プラス・ネットワーク」
http://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_ccpn_000016.html
国土交通省によればそれは、
「人口減少・高齢化が進む中、特に地方都市においては、地域の活力を維持するとともに、医療・福祉・商業等の生活機能を確保し、高齢者が安心して暮らせるよう、地域公共交通と連携して、コンパクトなまちづくりを進めることが重要です」
要は、インフラ投資を際限なく拡大する事は今後無理なので、選択と集中を行う必要があります。でも、インフラが途切れると国民生活が破綻します。なので、出来るだけ集まって暮らすのと、持続可能なインフラ投資を増やして、未来的なモビリティの普及を促進して、不便さはテクノロジーでカバーします、というような内容だと思われます。
これまでの壊しては作るインフラのイメージから、メンテナンスしてなるべく長く使うインフラへの転換。そして地域に必要なインフラの整備とそれに伴う都市づくりの見直しが必要になるでしょう。
いずれにしろ、行政は改革を志向しています。我々は、それに備えておくべきでしょう。
IEをすてて、Chromeを使おう
開発元のMicrosoftですら使用しないように警告しているIEですが、使っている会社はまだ多いようです。
私自身は(たぶん10年くらい前から)ChromeやSafariを使用しているのでそんな感覚はまったくありませんでしたが、なぜ企業は未だにIEを使うのでしょう。
実は私の会社でも一部IEを使っているサービスが残っています。みずほ銀行のオンライン決済システムです。みずほのオンライン決済はまだIE以外のブラウザに対応していなかったので(他のメガバンクに遅れて、今期特別損失を計上してシステムを更新するようですが)未だにIEです。
しかしこうなることは10年も前にはわかっていたのに(そして5年前にサポートも終わっているのに)、何故メガバンクともあろうものが対応を怠ったのでしょうか?これは構造的な問題として、世界の潮流がChroniumu式のブラウザに移行する中で、決済システムやATMを含む、巨大な銀行システムの変更に莫大な予算がかかるためだと思われます。
そして、いまだにIEにのみ対応する巨大なシステムが日本にはいくつか残っているようです。そんな旧弊的なシステムの一つに、入札システムがあります。
セキュリティーの保証がない入札システム
日本の入札システムはIEで動作します。IEは、その脆弱性を根本的には対応できないことをMicrosoftも認め、使用しないように警告しています。
脆弱性とは何かといえば、つまり情報の盗難やサイバー攻撃に対して防衛力が低い事を意味します。
IEを使用するという事は言うなれば、暗証番号が書かれたキャッシュカードを人に預けるようなものです。預かっている人がいい人だったので今まで問題にならなかっただけです。
そしてもっと大きな問題は、IEがWEB標準ではない、ということです。
WEB標準とは、JIS規格みたいなものですが、みんなが好きにWEBの仕様を作ると、ソフトウェアとかサービスの提供者が対応できないし、ユーザビリティも低いので、一定の仕様を共有しようぜ、という企画です。
つまり、IEを使用している場合、世間一般では当たり前に使われている最新技術から取り残されてしまいます。
たとえば、私は、会社でも、手持ちのPCでも、iPhoneでも、そして家でも、Chromeを開けば直前に見ていたページが開かれます。
これは、一度知ってしまうと後戻りのできない、非常に高いユーザビリティです。パスワード管理やSNS連係など、上げればきりがありませんが、多くの恩恵からIEユーザは取り残されています。
そして、今後は全く発展の余地がありません。
とにかく使用をやめよう
一部のシステムは、提供者側が考えを改めることを待つしかないとして、それ以外ではChromeを使用した方がよいです。
ChromeとかMicrosoft Edgeとか色々ありますが、Chroniumuと呼ばれる方式を採用しているという意味で、Chromeのコピー商品なので、GoogleのChromeが一番完成度が高いです。少なくとも今は。
大事なのは、将来的にChromeより素晴らしいブラウザが出てきても、WEB標準に準拠していれば乗り換えコストが低い事です。
ということで、特別な事情がなければ、Chromeを使いましょう。